Riyo Uemura
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批評
シュレースヴィ・ホルシュタイン交響楽団 Schleswig-Holsteinisches Sinfonieorchester 
メンデルスゾーン Vn協奏曲ホ短調
フレンスブルク新聞(Flensborg Avis) 2004年11月12日付
演奏日とホール:2004年11月9日 シュレースヴィヒ市立劇場
            2004年11月10日  フレンスブルク         Deutsches Haus (ドイチェス・ハウス)
      評者 :カール・ハーゲンス

禁止された旋律の輪舞
1933年から1945年の間演奏が禁止された音楽が、第3回シンフォニー・コンサートで演奏され、楽しく清らかな音楽がシュレースヴィヒとフレンスブルクの聴衆を喜ばせた。  ほんとうの音楽とは分析することを不要にするものであり明快であるはずのものである。そういう意味でメンデルスゾーンのホ短調協奏曲、そして植村理葉によるその演奏に高い評価が与えられる。ライプツィヒのゲヴァントハウス交響楽団の常任指揮者であったメンデルスゾーンからこの曲を献呈され、初演を行ったのは同楽団のコンサートマスター、フェルディナント・ダーヴィトである。その初演の遺産を160年後にこの女性ヴァイオリニスト植村理葉は相続した。そのときの指揮者はデンマークの作曲家ネールス・ガーゼである。  客演指揮者グラハム・ジャクソン(クレーフェルトの音楽監督)の州立管弦楽団の演奏の質は保証書つきだった。植村理葉のヴァイオリンは美しい旋律を歌った。それを彼女は軽々とやってのける。うわべの効果をねらわずに彼女は聴き手の心をとらえた。 ヴァイオリンの洗練された音で彼女は聴き手の耳を開く。聴衆はカデンツァに聴き入った。珠玉の対位法的処理から、甘美なカンティレーナ、妖精の舞う夏の夜の夢のような響きを聴かせた。あと、猛烈にラストスパートをかぇて歓声をあげる。ものおじせず高い嬰ハ音へやすやすと跳躍するこの独奏者の輝き。オーケストラとの響きの調和が人を魅了する。
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          Schleswiger Nachrichten紙  2004年11月15日付
      演奏日:2004年11月12日メンデルスゾーンVn協奏曲
   於: Rendsburg(レンツブルク)市立劇場
  評者: ヴィンフリート・リヒター
楽しい安らぎの交響
 《平和への憧れ》をテーマとする州立交響曲楽団の演奏会
 グラハム・ジャクソン指揮のシュレースヴィヒ・ホルシュタイン交響楽団の今シーズン第3回コンサートは、理解しやすい曲目をならべた。メンデルスゾーンとツェムリンスキーはユダヤ系であり、ロッシーニの序曲《ヴィルヘルム・テル》は自由を求める戦いを歌っている。音楽以外のこととの結びつきを軸に曲目が組まれているのである。こうしたことも考えてみる価値があるが、この標語は実際に鳴った音楽の出来の点でも納得がいった。 ロマンチックな気分と熱っぽい響きに接した喜びが、ロッシーニだけではなくメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲と結びのツェムリンスキーの変ロ長調交響曲でも聴衆を熱狂させた。   オーケストラによるこの平和的な牧歌がこの晩の演奏で驚くほど深い印象をあたえたことは、女性ヴァイオリン奏者、植村理葉の功績である。絹のように柔らかく艶のある音はゴツゴツした角が全くないし、ごく速いテンポのところでもいつもしなやかな強弱法になっている。とりわけ第1楽章のカデンツァのあとは、独奏者とオーケストラのパーフェクトな融け合いが、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲の特徴である屈託のない音のはこびの素晴らしさを完璧に聴かせた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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